キャリアカウンセリングとは?

目次

はじめに

ここでは、キャリアカウンセリングとはどういったものなのか、キャリアカウンセリングでは何をするのか、カウンセラーは悩みを解決してくれるのかなどについてお話していきたいと思います。

少々長くなりますが、どうぞ最後までお付き合いください。

カウンセラーは悩みを解決してくれない?

カウンセラーの役割は、相談者が抱えている悩みを解決できるようにサポートすることだと私は思っています。


「サポートするってどういうこと?」と思われた方はいらっしゃいましたか?
あるいは、「お金を払ってカウンセリングを受けるのだから、カウンセラーが悩みを解決するための何か良い方法を教えてくれるんでしょ?」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。

実は、カウンセラーは相談者と一緒に悩みの解決方法を探していくサポートをするのであって、実際に悩みの解決方法を見つけて解決していくのは相談者自身なんだと私は考えています。

カウンセラーが悩みの解決方法を教えるわけではないということをご理解いただきたく、少しお付合いいただけますでしょうか。


例えば、あなたが悩んでいる時に、初めて会った著名なカウンセラーから「こうしなさい」とアドバイスを受けたとしたら、どうするでしょうか?
著名なカウンセラーの言うことであれば、あなたはそのアドバイスを受け入れ、実行するでしょうか?


すぐにアドバイスを受け入れて実行できる人は、とても柔軟な考え方を持っている人なのかもしれません。あるいは自分の意志を持っていない人なのかもしれません。そして、もしその結果うまくいかなかった場合、きっと「あのカウンセラーの言うことを聞かなければよかった」と後悔し、同時にその責任をカウンセラーに求めたくなるのではないかと心配になります。

すぐに受け入れられない人は、きっとカウンセラーのアドバイスに対して納得できない部分があるのだと思います。自分の想いや考えと違う、自分のことを理解してもらえていないと感じる、あるいはカウンセラーのことを信用していないなどがあるかもしれません。でも、それは当然のことであって悪いことではないと思います。


人は本来、納得できないと受け入れられず、納得できないと行動できないのではないでしょうか。
しかし、人生の中で、納得できていないのに行動しなければならないこともあるかもしれません・・・

例えば、仕事で上司、あるいは同僚から言われて、納得できないけどやらなけらばならなかった経験はありませんか。その時、すごく腹が立つし、モヤモヤするし、理不尽さを感じて嫌な気持ちになりませんでしたか?

考える時間や話し合える環境をもらえたら、もしかしたら嫌な気持ちにならなかったかもしれないですね。
一方的な対応(コミュニケーション)って、ストレスを感じたり悲しくなってしまうことが多いのではないでしょうか。


「納得したうえで行動する」ことって、すごく大事なことなんだと思います。


自分の頭でよく考え、悩んで決める、そして自分の責任で行動するということが、とても大切なことなんだと思います。
辛いかもしれないれど自分で悩み抜いて決断し、行動する・・・たとえその結果がうまくいかなかったとしても、それは後悔につながらないのではないかと私は思います。


冒頭で、カウンセラーは悩みを解決できるように「サポートする」という表現をしたのは、このようなことが理由にあります。決して、無責任にカウンセリングするということではなく、また、相談者任せのカウンセリングということでもありません。
悩みを解決するための意思決定や行動には、悩んでいる本人が納得できるまでの時間が必要です。その納得するためのプロセスをサポートするのがカウンセラーの役割になることをご理解いただけますでしょうか。

キャリアカウンセリングのプロセス

キャリアカウンセリングのプロセスについて、もう少し詳しくお話させてください。
下図を参考にしながら説明していきます。

キャリアカウンセリングのプロセス
キャリアカウンセリングのプロセス

キャリアカウンセリングでは、相談者の抱えている悩み(問題)を相談者が最終的にどうしたいのかという目標を定め、その目標を成し遂げること、つまり問題を解決すること、あるいは改善することを目指して支援を進めていきます。
上図では、相談者が悩みを「話す」ところから始まり、各プロセスを経て「方策の実行」に至るまでが1サイクルになっています。実行した結果を振り返り、悩みの改善が不十分な場合には、次の1サイクルに入っていきます。

STEP
話す

相談者が抱えている悩みについて詳しくお話いただくステップです。
相談者は悩んで困っていますから、頭の中がいっぱいだったり、ぐちゃぐちゃで混乱していたりするかもしれませんが、気にせずに話しやすい順番でお話しください。
カウンセラーが受容的・共感的にお話をお聴きし、そしてご質問などを交えながら、内容や事柄を整理していきます。カウンセラーは、相談者の悩んでいる状況や気持ちなどを理解しようと、全神経を集中させてお話を聴いていきますので安心してお話しください。カウンセラーとしては傾聴がメインになります。

STEP
問題の把握

前のSTEP1で相談者からお話しをお聴きしながら、相談者が相談したい問題を把握していくステップです。
ちょっと難しい話になりますが、相談者が訴えていることが、相談者の真の問題であるとは限らないというケースが多くあります。

例えば、相談者が「転職しようか迷っています・・・転職できるでしょうか?」と最初に話された場合ですが、相談者が相談したい悩みは「転職できるか」でしょうか?
きっと、転職を迷うようになったきっかけがあるのだと思います。そのきっかけが、給料や待遇のことなのか、やりがいを感じられないことなのか、人間関係のことなのか、育児・介護のことなのか、相談者がどんな状況で、どう悩んでいるのかをお話しいただき整理していかなければ、相談者が抱える悩みの根本を理解することができません。

この問題の把握はとても大切なステップで、初回カウンセリングのほとんどがこの「問題の把握」に費やされることになります。ですから、初回のカウンセリングだけでは、「話を聴いてもらって終わった」、「話すだけで何も解決しなかった」という印象をもってしまうことがあるかもしれません。
しかし、色々と話していく中で、頭の中が整理されたり、気持ちが軽くなったりなど、相談者の中で少しだけでも変化は起きていると思いますので、ここで終わらずに、次回のカウンセリングを受けてステップを進めていただきたいところです。

STEP
目標の設定

STEP2で問題を把握できたら、悩んで困っている状況を「どうしたいか」を確認していきます。もちろん、悩みを解決したいのは当然ですから、どのような解決(改善)を目指したいかを一緒に考えていきます。

例えば、上司との人間関係が原因で転職を考えて悩んでいる場合、相談者にとってどうなることが望みなのかを検討していきます。
上司と良好な関係になりたいのでしょうか。必ずしもそうではないかもしれません。仲良くなることは望んでないかもしれませんし、上司のことを気にならなくなればいいと思っているかもしれません。あるいは、どうしても上司と離れることが必要だと感じているかもしれません。

相談者の状況や置かれている環境によって、いろいろな目標が考えられます。目標のハードルが高かったり、遠いと感じる場合には、目標達成を可能とするための小さな目標を設定して、段階を踏むことも必要になります。

STEP
方策の検討

STEP3で設定した目標を達成させるためには、どんな方法があるのかを一緒に検討するステップです。効果がありそうなこと、できそうなことなど、可能性を捨てずに考えていきます。

ここで、相談者の思い込みや認知のくせ(偏り)などによって、可能性のある目標達成への方法が排除されないように気をつけなければなりません。

例えば、「上司のことを気にしないようになる」という目標を設定した場合、方策として「上司を無視する」という方法は現実的ではないので相応しくありません。無視できるなら悩んでいないはずですね。

上司と関係性が良くない原因は何でしょうか?

上司に要因がある場合、その要因を取り除くことは可能でしょうか?
パワハラなど明らかな不法行為であれば、しっかりと訴えていくことが必要ですが、それ以外については訴えていくことは難しいかもしれません。
人はそれぞれに、考え方の違い、価値観の違いなどがありますので、お互いに言い分があって正しいと思っているので、相手を改善させることは非常に困難なことになります。
よく耳にする「人は変えられない」という言葉がありますが、自分が変わってしまったほうが早く楽になれるかもしれませんね。

自分ができることを考えてみましょう。

・自分の仕事に自信を持つためにスキルの向上に取り組む
・上司の言葉にすぐに感情的に反応しないようにマインドフルネスを取り入れる
・孤立しないように仲間を増やす
・自分を守るためにも他の上司や同僚にも相談しておく
・上司にもう少し意見や想いを伝えられるように伝え方の学習をする
・自分の考え方のくせを理解して自分が完ぺきではないことを理解する
・証拠を残すために日常の出来事を記録しておく

など、まだまだいろいろなことが考えられます。即効性は無いかもしれませんが、徐々に効果が出てくるかもしれません。
もちろん、会社を辞める、転職するという方法も有りだと思いますが、自分がやれることをやってみてからでも遅くないのかなと思います。

このように、方策の検討をする際には、自分(相談者)の思い込みや認知のくせ、価値観、プライドなどが障害となることがありますので、客観的・俯瞰的に検討できるようにカウンセラーと一緒に考えていきましょう。

STEP
意思決定

前のSTEP4でいくつかの方策が出てきましたが、どれを実行するかを選び、その実行を具体的に計画するステップです。

難易度の高いものは実行するまでに時間がかかるでしょうから、できそうな方策から取りかかっていくことが望まれます。簡単なことでも実行すれば変化が出てくるかもしれませんし、変化が出てくればモチベーションもあがり、目標の達成に近づいていきます。

方策を実行する前の準備として、どのように実行するかを具体的に計画します。
例えば、「自分を守るためにも他の上司や同僚にも相談しておく」の場合、「今週の水曜日にある定例会議の休憩時間に、課長に相談したいことがある旨を伝える」というように、より具体的にしておいた方が行動する決心が固まるので良いかと思います。

意思決定をするには覚悟が必要になります。カウンセラーと話しながら、不安な気持ちを乗り越えていきましょう。

STEP
方策の実行

STEP5の意思決定で計画した方策を実行するステップです。
方策の内容によっては、実行するまで時間がかかるものもあれば、すぐに実行はできるけど効果が出るまでに時間がかかるものもあると思いますので、モチベーションを維持していけるようにカウンセラーと話し合いながら進めていくことが良いかと思います。

実行した結果、どんな変化があったか、状況は改善されたかなど、目標が達成されたかを振り返って確認します。もしも、悩みの改善が不十分な場合には、違う方策の実行や目標の変更が必要なのかもしれませんので、カウンセラーと一緒に検討していくと良いと思います。

どこまでカウンセリングが必要なのか?

キャリアカウンセリングのプロセスを見ていただきましたが、どのように感じましたか?

文字で見ると、自分ひとりでできそうな感じがするかもしれません。
もしかしたら、実際にひとりでできる人もいるかもしれません・・・


このプロセス自体は、私たちが普段、仕事や生活する中でなにげなく実行している「課題解決思考」と同じものですので、難しい理論ではないはずです。
ただ、悩みを抱える本人が、悩みの渦の中で溺れかけている時に、果たしてこのプロセスをひとりで実行していけるでしょうか?

やはり、だれかのサポートが必要なのではないかと思います。

カウンセラーと話し合って出した答えや実行したことは、後で考えると「冷静に考えてみればわかること」「やろうと思えばできること」と感じる内容かもしれません。しかし、それがわからないから、できないから困っていたのです。


カウンセラーが、カウンセリングの中で最もパワーを要するのは初回のカウンセリングだと私は感じています。
相談者との信頼関係をつくりながら、悩んでいることを詳しくお話いただき、問題の把握をするまでの初回のプロセスは、とても大切なプロセスだと思っています。
そして、初回のカウンセリングが終わった後、カウンセラーは話したことを思い出しながら書き起こし、まとめていきます。まとめていく際に、カウンセラーが感じたことなども取り込みながら、「相談者の悩みが解決するために、どんなことが必要なのだろう」と、次のステップに向けて考えていきます。

初回カウンセリングは悩みを解決するための入口で、次に目標を設定して方策を検討する、その次に意思決定して方策を実行するという流れになりますので、最低で3回目のカウンセリングは必要になると個人的には考えています。
悩みが深いほど、目標の設定→方策の検討→意思決定に時間がかかっていきます。時間がかかるほどモチベーションが低下していきますので、カウンセラーのサポートが必要になると感じています。

まとめ

カウンセラーの役割について、キャリアカウンセリングのプロセスを中心にお話をさせていただきました。

キャリアカウンセリングのプロセスは、私たちが普段、仕事や生活する中で実行している「課題解決思考」であり、難しい理論ではありませんので、自分ひとりでやろうと思えばできないこともありませんが、悩んでいる本人が冷静に実行することは難しいと思われます。

ですから、カウンセラーがサポートしながらプロセスを実行していくわけですが、カウンセラーは解決をサポートするのであって、解決方法を教えるようなことはできません。
悩みの解決について、相談者が自らの力で考え、行動することが必要となります。それは、「自分が納得したうえで行動する」ということが、人生を送るうえでとても大切なことだからです。

自分の人生を生きていくには、自分の意志で選択して行動していくという責任と覚悟が大切だと思います。

このように、解決をサポートするためのカウンセリングは、抱えている問題の深さによって必要な回数も増えていくと思います。
1回のカウンセリングでは問題を解決するための方向性が見えてくることはありますが、問題が解決することは難しいと思います。問題を解決するためには、複数回のカウンセリングでサポートしていく必要があると考えています。


キャリアカウンセリングとは何か、効果や必要性などで迷われている方の参考になれば幸いです。

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