先日、産業保健師さんからご依頼を受け、若手社員のキャリアについて考えるセミナーを開催させていただきました。
ところで・・・
みなさんは、産業保健師という職業をご存じでしょうか?
産業保健師とは、企業で働く従業員の健康維持や改善を目的として業務をされている保健師のことです。産業医や人事と連携して健康相談や保健指導、ストレスチェックの実施者として業務を担う産業保健スタッフとして、従業員が心身ともに健康で働けるように支えてくれています。
常時働く従業員が50人以上の会社では、衛生委員会の設置が義務付けられていますが、その構成メンバーは、①総括安全衛生管理者、②衛生管理者、③産業医、④衛生に関する経験を有する労働者となっています。
産業保健師は必須メンバーではありませんが、専門知識を活かして健康管理の推進や衛生委員会を活性化させる重要な役割を担っていますので、メンバーとして配置されているほうが良いことは言うまでもありません。
ただ、現状としては、ある程度大きな規模の会社でなければ配置されていないようですので、今後は中小規模の会社でも社員の健康を守るために配置されるようになることが期待されるところです。
産業保健師さんは、健康診断の結果に基づいた保健指導(予防・維持・改善)以外にも、社員から悩み事の相談を受けたり、職場の管理職などから部下のことで相談を受けたりすることもあるようです。
社員や管理職からの相談の中には、働くことにかかわる悩みが多分に含まれているでしょうから、私たちキャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)の活動領域と重なる部分があると思われます。
キャリアカウンセラーが受ける相談では、職場の人間関係の悩みだったり、部下との価値観のギャップによる悩みだったり、仕事への適性の悩みだったり、今後のキャリアについての悩みだったりなどがあります。
産業保健師さんの主業務は、社員が健康で働けるための保健指導ですから、このような働くことにかかわる悩み相談(キャリア相談)は本業から少し外れてしまう感じもありますが、社員の健康管理や健全な職場環境づくりに携わるスタッフとしては避けられない相談のひとつとして存在しているのかと思います。
産業保健師さんの役割についての説明が長くなりましたが、今回のセミナーでお話したことを少しご紹介いたします。
セミナーのテーマは「若手社員の傾向と職業観について」としました。
まず、セミナー内容を構成するうえで、「若者の特性を理解すること」を意識しながら検討しました。

人を理解するには、
①普遍的・普遍的な要素が土台にあり、
②その時代の社会経済的な影響を受け、
③その人特有の個性・特性があり、
これらが相互に関係しあって、「人の特性」があるのだろうと思っています。
これをイメージしながらセミナーの流れを考え、次のように構成になりました。
1. Z世代の傾向
2. モチベーション理論
3. 若者の離職状況
4. 若者への対応
5. 相談者を理解する
これくらいの構成でも120分では時間が足りずで・・・少々盛り込み過ぎたのかもしれません。
「盛り込み過ぎのくせを治さなければ・・・」といつも思うのですが、なかなか治せないものですね(反省)
どんなお話をしたのか、さわりだけになりますがご紹介させてください。
1. Z世代の傾向
Z世代の特徴について、私なりに一言で表すと「個の尊重と合理的思考かなぁ~」と考えています。
「デジタルネイティブ」や「低成長時代」といった時代の影響を受けながら育った世代です。
「自分のことを理解して欲しい」という承認欲求や、「丁寧に教えて欲しい」というリスクの回避などが強い傾向があるかもしれませんが、同時に、「成長したい」、「役に立ちたい」といような前向きな気持ちも持っていて、決してやる気がないとか、わがままだとかなどがベースになっているわけではないことを理解する必要があると思います。
2. モチベーション理論
・X理論とY理論:性善説か性悪説か
・ニ要因理論:動機づけ要因と不満足要因
・欲求5段階説:5つの欲求の役割と時代背景
一言では理論の説明ができないので省略させていただきますが、人が働くにあたりベースとなる気持ちや欲求について、これらの理論を通して再確認してみました。
3. 若者の離職状況
リクルート、マイナビ、エン・ジャパンなど、さまざまな団体で早期離職や若者の働き方について調査をしていますが、今回はJILPT(労働政策研究・研修機構)の統計調査資料を参考にして整理してみました。
この統計資料の整理がとてもボリュームがあって一言ではお伝えできないのですが・・・
■若者の離職理由のトップ5
・人間関係が良くない
・健康を損ねた
・労働時間、休日、休暇などが良くない
・賃金が良くない
・キャリアアップ(男性)
・自信を失った(女性)
■1年以内の離職理由のベスト3
・人間関係が良くない
・健康を損ねた
・自信を失った
■事前情報と実際のズレがあると離職が高まる
■給与額の低さは離職要因ではあるが離職のタイミングがある
■会社の都合でOJTを進めると離職が高まる
など・・・
ここでは伝えきれずごめんなさい。
若者特有の事情もありますが、根本はどの世代にも共通したことなのかと感じます。
共通事項にも世代によって強弱がある・・・ということなのだと思います。
4. 若者への対応
1~3を踏まえて、若者にはどのように対応すればよいのか。
ここでは詳しくお伝えできませんが、対応の土台には、「コミュニケーション」の大切さがあります。
これを読んで、「そんなことわかってるし、一般的に言われていることだよね」と思われた方は多いのではないでしょうか。
しかしながら、この「コミュニケーション」が不十分なために、多くの人たちが悩んでいるのだと思います。
何のためのコミュニケーションなのか、なぜコミュニケーションが必要なのかを、改めて考えてみる必要がありそうです。
コミュニケーション不足は、決して先輩や上司だけの責任ということではなく、当事者本人にも要因があるのかもしれません。
コミュニケーションが難しくなっている背景には、
・働く現場で余裕が無いこと
・低成長社会や不景気の影響
・少子化や人材不足などの社会経済情勢の影響
・親の養育に関わる課題
など・・・
様々な要因があるのかと思います。
若手社員が活き活きと働けないことは、若手社員だけの悩みではなく、先輩や上司も悩み疲弊していくことにつながっていく悩ましい問題です。
こういった時代の影響を受けながらも、
「どうやって若手社員を育てていくか・・・」
現場任せではなく企業として取り組んでいかなければならない重要な課題だと思います。
5. 相談者を理解する
キャリアカウンセラーに限らず、相談を受ける者にとって大切なことは「傾聴」だと思っています。
傾聴とは、ただ相手の話を「うんうん」と聞くだけではありません。
そして、相談者に一方的に意見することでもありません。
相談者は話すことで、自分の悩んでいる状況や気持ちを整理していきます。
そして、自分がいったい何に悩んでいるのか、その本質に気づいていきます。
そして、自分はどうしたいのか、何を解決すればいいのかが見えるようになってきます。
産業保健師さんがどんなに良い解決方法を伝えたとしても、相談者本人が納得できなければ何の役にも立ちません。
「いかに相談者本人が納得できるか」がとても重要で、そのための傾聴となります。
信頼関係やタイミングなど、色々な要素や条件が組み合わさって、解決へと進んでいくことになります。
このように、「傾聴」はとても難しいものなのです・・・
今回のセミナーは、若手社員の職業観とその理解について考えるものでした。
働くということは・・・
・個人の人生
・会社で働く人たちの人生
・会社の存続
など、
色々なことが影響し合って成り立っているのだと感じます。
個人と会社(職場)がお互いにWin-Winの関係になれるような、明るい職場・会社であって欲しいと願っています。
