計画的な偶発性理論(ジョン・D・クランボルツ)

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計画的な偶発性理論 -Planned Happenstance Theory-

私の大好きなキャリア理論のひとつに、教育心理学者のジョン・D・クランボルツ教授が提案した「計画的な偶発性理論」があります。

この理論の説明は、次の表現がわかりやすいと思います。
「偶然におきる予期せぬ出来事からも自分のキャリアは形成されるものであり、むしろその予期せぬ出来事を大いに活用すること、偶然を必然化することを我々に勧めている。」~宮城まり子著 2010「キャリアカウンセリング」第16刷 駿河台出版社 より引用~


もっと簡単に表現すると、
「偶然を必然化しよう!」
ということだと思います。


私はセミナーなどで、この「計画的な偶発性理論」を用いて次のようにお話します。

「偶然に巡り合うためには、自ら偶然と出会うための行動を起こす必要がある」
「黙って立ち止まっていても、偶然と巡り合うことはできない」


つまり、「偶然とは、必然である」ということなんだと思います。

偶然を「過去から現在」で考えてみると

あなたが今、当たり前にできていることの中に、「偶然」からつながっていることはありませんか?

私の話になりますが、少し聞いていただけますか。


私はパソコンのExcelが結構得意な方だと自分では思っています。

私が学卒で就職したのが1991年、今から34年前になります。
この頃はまだワープロ全盛期でした。
若い人たちは「ワープロって何?」って思いますよね!(笑)

ワープロとは、簡単に言うと、パソコンのWordの機能だけをもった機械です。
ただし、Wordのような多彩な機能はありません。

会社で書類をつくる際に、このワープロを使っていました。
私はこのワープロを結構使いこなしていて、ちょっと自慢でした。


ところが、入社して5年くらいたった時、会社にパソコンが配備されました。
「パソコンなんてマニアックな人たちが使うものだよね」みたいな印象しかなかったのです。

Windows95・・・
Word、Excel、PowerPoint・・・
全くわかりません(泣)


使い慣れたワープロは、やっぱり使いやすいし、不便を感じないんです。
「やっぱり、ワープロだよね」と言いながら、しばらくはワープロを使っていました。

WordやExcelを本を見ながら勉強して基本的な操作は覚えましたが、やっぱり使いにくい。
「ワープロで十分!」
確信めいた気持ちでした。

そんな中、ある社員がつくったExcelを見る機会がありました。
それは、社用車のガソリン代を算出するためのExcelファイルでした。

「自動で計算できるんだ・・・」

私にとって、それはとても衝撃的なものでした。
今までひとつひとつ計算してワープロで入力していたものが、Excelを使うと指定されたセルに入力するだけで自動的に計算されてしまうんです!

「どうやってこれをつくるのだろう?」

ここから、私のExcelの勉強が始まりました。
独学だったのでかなり苦労はしましたが、書式の細かな設定方法、関数の使い方などを取得し、会社の書類づくりや統計などの自動化に貢献しました。


この経験をきっかけにパソコンへの興味が沸き、今ではパソコンアプリを使うのは結構得意な方だと思えるまでになりました。
プログラミングがまったくわからない私が、このホームページを自分でつくることができたことは、きっとあのExcelファイルとの出会いがあったからなのだと思います。

「会社から強制的に配備され、全く興味を持てなかったパソコンが、今では得意なほうだと思えるようになっている」


自慢話のようになってしまいましたが・・・

たまたま偶然に出会ったガソリン代算出のExcelファイル、
そして好奇心をもってExcelを自発的に学習し続け、
段々とパソコンが得意になっていった


これは、冒頭で紹介したように「偶然におきる予期せぬ出来事からも自分のキャリアは形成されるものである」というひとつの例になるのかと思います。


「過去の偶然」が「現在の必然」になる考え方でした。

偶然を「現在から未来」で考えてみると

「将来、こうしたい!」
叶えるためには、行動し続けることが大切です。

夢や希望を叶えるためには「努力」が必要なことは誰でも知っています。
「でも、努力を続けても叶わないことってあるよね」
確かに、その通りだと思うのですが・・・


何かの本で読んだことがありますが、成功している人たちはだいたい次のようなことを言うようです。

「私は運が良かったんだと思う」


運が良かったってどういうことなのでしょう?
確かに、成功には「運」が必要なのかもしれません。
だけど、その前提に「努力」、つまり前向きに行動することが必要で、行動があったからこそ「運」=「偶然」と出会うことができたのだと思います。


つまり、「偶然に出会うためには、偶然に出会う準備ができていないといけない」
それは、行動することなんだと思います。

みなさんは人生の中で、「あの人に出会えてよかった」というような「縁」に感謝したことはありませんか?
たまたまその人に出会っただけなのか、運が良かっただけなのか・・・
だけど、出会う前に、「あなたが行動していた」という事実があります。


「偶然とは、必然である」

いつ「偶然」に出会うかわかりませんが、「偶然」はわたしたちのまわりに存在しているのではないでしょうか。
黙って立ちすくんでいるといると、「偶然」が通り過ぎてしまったことにも気づくこともできません。



「現在の行動」を「将来の偶然」につなげる考え方でした。

キャリアは予期できないことが多い

計画的な偶発性理論を説明しましたが、いかがでしたでしょうか。

前述の “偶然を「現在から未来」で考えてみると” では、目標をもち行動するというポジティブ感が強いニュアンスになってしまいました。目標を持つことは大切なことだと思っています。
ただ、目標にこだわりすぎると、
 ・視野が狭くなったり
 ・行動できなかったり
など、柔軟性や楽観性を失い、良い行動ができなくなってしまう恐れもあります。


クランボルツ教授の研究では、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」といわれています。
キャリア(人生)は、予期できないことのほうが多いということのようですが、みなさんのキャリア(人生)はいかがでしょうか?


予期できない出来事が生じた時、前向きに捉え、柔軟性をもって、自らチャンスをつくっていくことが大切だと、この計画的な偶発性理論を通して、クランボルツ教授は説明しているのだと思います。


もしかしたら、「ポジティブすぎてなんか疲れるね!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
そう感じさせてしまったらごめんなさい。

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